
契約書は、法律で決められた期限の間、適切な方法で保管する必要があります。しかし、起業したばかりの人の場合、契約書の保管に関してどのような規則が課されているのか詳しく知らない人もいるでしょう。そこで本記事では、契約書の保管期間と保管方法に焦点を当てて詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
契約書の保管期間
契約書は契約の効力が続いている間だけでなく、契約が終了した後も法律で定められた期間保存する義務があります。契約書や関連書類の保存期間は、関係する法律ごとに異なり、担当部署ごとに分類されています。主な契約書・文書の保存期間は、以下の通りです。
2年(人事・総務)
健康保険・厚生年金保険・雇用保険に関する書類が該当します。
3年(人事・総務)
労災保険関係書類、労働保険の徴収・納付書類、派遣元管理台帳などが該当します。
4年(人事・総務)
雇用保険の被保険者に関する書類が該当します。
5年(経理)
会計監査報告、有価証券届出書の写しが該当します。
7年(経理)
領収書・請求書・契約書・見積書・電子取引情報・源泉徴収簿が該当します。
10年(経理)
帳簿(仕訳帳・総勘定元帳 他)、計算書類および附属明細書(会社法)が該当します。
契約書の基本的な保存期間
会社法では、契約期間が終了した契約書は10年間の保管が義務付けられています。これは一般債権の消滅時効が10年とされており、トラブル発生時の証拠として契約書が有効であるためです。そのため、契約終了後10年を超える保存義務はありません。
税務上の契約書・文書の保存期間
法人税法では、契約書・請求書・領収書・帳簿などの税務関連書類の保存期間を7年と定めています。ただし、この7年間は発行日からではなく、法人税の申告期限から数えるため注意が必要です。
たとえば、2020年3月31日決算の企業の場合、法人税の申告期限は2020年5月31日となり、その年の領収書などは2027年5月31日まで保存する必要があります。税務調査でも7年以上さかのぼることはありません。
契約書の保管方法
ここまで契約書の保管期間についての法律を確認しましたが、実際にどのように契約書を保管すればよいのでしょうか。本項では、契約書の適切な保管方法やそれに関連する法律の規定について解説します。
契約書の保管方法
近年、テレワークの推進や働き方改革により、企業のペーパーレス化が進んでいます。しかし、契約書は依然として紙の書類として交わされることが多く、企業は長期間の保管が求められているのです。前述のとおり、契約書の保存期間は最長で10年間と定められており、それにともない広大な保管スペースや管理の負担が発生します。
契約書は必要なときにすぐに取り出せる状態にしておくことが重要です。そのため、多くの企業ではExcelなどを活用して契約書の台帳を作成し、契約の内容や保管期限を明確に管理する仕組みを構築しています。そして、契約書の保管期間が終了した際には、適切に廃棄するルールを設けているのです。
しかし、多くの企業では法律で定められた保存期間が過ぎた後も、何となく捨てられずに契約書を保管していることがよくあります。しかし、不要な契約書を保管し続けることにはリスクがともないます。
不要な契約書を保管し続けるリスク
保管期間を過ぎた契約書が適切に処分されない場合、情報漏洩の危険が高まります。とくに、契約書には企業の重要な取引情報や個人情報が含まれているため、不適切な管理がトラブルの原因となる可能性があります。
さらに、契約書の保管には大きなスペースが必要です。契約書が増えるにつれ、社内の保管場所が圧迫され、業務の効率が悪化する恐れがあります。そして、契約書を長期間保管し続けると、それを管理するための人件費や倉庫費用などがかかります。
適切な管理が行われなければ、保管コストが増大し経営の負担になる可能性が高いです。このようなリスクを回避するためには、企業によっては契約書の保管や管理を専門に行う外部業者に委託することも検討しましょう。
契約書のスキャン保存は法律上認められる?
ペーパーレス化を推進する企業の中には契約書をスキャンしてPDFなどのデジタルデータとして保存すれば、紙の契約書を処分できるのでは?と考えるところもあるでしょう。しかし、現時点ではスキャンした契約書のデータは原本としては認められず、あくまでコピー扱いとなります。
これは、民事訴訟上、紙の契約書が原本としての証拠能力をもつためです。契約書をスキャンして保存したとしても、それはコピーとみなされ、原本の代わりにはなりません。そのため、一度紙で交わした契約書は、法的効力を維持するためにも原本を適切に保管しておく必要があります。
まとめ
契約書の保管は、法律で定められた期間と適切な方法に従う必要があります。契約書の保存期間は内容や法規により異なり、会社法では契約終了後10年間、法人税法では税務関連書類を7年間保管する義務があります。適切な管理を怠ると、情報漏洩や保管コスト増大のリスクが高まるので注意しましょう。リスクを回避するには、Excelを活用した管理や外部委託の検討が有効です。また、スキャン保存は可能ですが、原本としての効力はなく、紙の契約書の保管が依然として必要です。契約管理の最適化が企業のリスク回避につながります。
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