事業主が下請事業者と契約を結ぶ際「下請法」という法律を守るために、契約書の記載事項に注意しなければならないことがあります。ただ、具体的にどのようなことに注意しなければならないかわからない方もいるでしょう。下請業者とのトラブル回避や、下請法に違反し罰則を受けないために、事業主が注意すべき契約書の記載事項を解説します。
そもそも下請法って何?
下請法は、公正かつ自由な競争の実現を目指すための法律で、下請事業者が不利にならないように、親事業者が守るべきルールを定めています。正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といい、下請取引の公正化・下請事業者の利益保護を目的とした法律です。
取引が下請法の対象となるかどうかは「事業者の資本金規模」と「取引の内容」によって決まります。取引内容が、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託のいずれかに該当する場合に適用されます。
また、支払期日を定める義務としての役割があります。事業者は、下請事業者との合意の下に、下請代金の支払期日を、物品等を受領した日から起算して60日以内に定める義務があります。
支払期日を明確に定めなかった場合は、「物品等を受領した日」に支払う義務が生じると定められているのです。支払期日を契約書に記載しているか確認してみましょう。
そのほか、書類の作成・保存義務についても確認しておくことが大切です。下請取引の内容を記載した書類を作成し、2年間保存することが義務付けられています。また、遅延利息の支払義務です。支払が遅延した場合は、遅延利息を支払うことが義務付けられています。
また、事業者には、11項目の禁止事項も課せられていることを留意しておかなければなりません。たとえ下請事業者の了解を得ていても禁止なので、契約書の内容に問題がないか、受領拒否の禁止や返品の禁止、買いたたきの禁止や報復措置の禁止などの事項も確認しましょう。
なお、11項目の禁止事項については、下請法第4条で定義されています。また、下請法の対象となる4つの取引内容(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託)についての詳細は、下請法の第2条に記載されています。
契約書で下請法違反をしないために
下請法では、事業者に対する義務と禁止事項を定めています。契約書で下請法違反をしないためには、まず事業者の義務と禁止事項を知る必要があります。契約書を作成する際には、事業者の義務と禁止事項に抵触していないか注意しましょう。
まず、下請法で定められている事業者の義務は4つあります。一つ目は、書面の交付義務です。下請法第3条では、書面の記載事項等に関する規則が定められています。事業者が発注する際は、契約書にすべての記載事項を明確に記載し、下請業者に交付する義務があります。
書面の交付は、原則として取引の都度必要で、委託する内容や金額などを具体的に記載する必要があります。下請法第3条に規定する書面(3条書面)を作成する際「下請法第3条の書面の記載事項等に関する規則(3条規則)」に定める事項をすべて記載していれば、特に制約はなく、書式が決まっているわけではないため自由に作成できます。
また、契約書の内容が、すべて網羅している場合には、当該契約書等が3条書面となるので、独立した書面を作成する必要もありません。
二つ目は、支払期日を定める義務です。事業者は、下請事業者との合意の下に、下請代金の支払期日を、物品等を受領した日から起算して60日以内に定める義務があります。
また、支払期日を明確に定めなかった場合は「物品等を受領した日」に支払う義務が生じると定められています。支払期日を契約書に記載しているか確認してみましょう。
三つ目は、書類の作成・保存義務です。下請取引の内容を記載した書類を作成し、2年間保存することが義務付けられています。
四つ目は、遅延利息の支払義務です。支払が遅延した場合は、遅延利息を支払うことが義務付けられています。
契約書の記載事項で注意すべきポイント
契約書(3条書面)作成時には、注意したいポイントがいくつかあります。まず、下請法第3条の書面の記載事項等に関する規則(3条規則)」に定める事項を確認し、すべて記載しているか確認しましょう。
代金については、本体の価格に加えて消費税及び地方消費税の額も明示したほうがいいでしょう。また、振込手数料などを差し引いて支払う場合には、その旨を記載する必要があります。
「納期」は、注文した物品を受領する期日を具体的に記入し「納入場所」には、受領する場所を詳しく記入します。会社の場合は、部署や課まで分かりやすく記入することが大切です。「検査完了期日」は、検査をおこなう場合には必ず記載しましょう。
「〇年〇月〇日」と具体的に記載するか、「納品後○日」「納品後○日以内」などと記入します。「支払期日」も、支払年月日を具体的に記入するか、支払制度(締切日、支払日)を記入しても差し支えないとされています。
但し、「納品後〇日以内」という書き方は支払期日が特定されていないとみられるので避けましょう。また「支払期日が金融機関の休業日に当たる場合には翌営業日に支払う」とすることがありますが、その場合は予め下請事業者との合意が必要です。
まとめ
事業主が下請事業者と契約を結ぶ際、事業者の資本金規模と取引の内容によって下請法が適用されるか決まります。下請法を違反すると罰則を科せられるので、契約の際には、下請法における事業者の義務と禁止事項をしっかり確認したうえで、契約書を作成する必要があります。法律に対する理解を深め、トラブルにならないように注意しながら契約書を作成し、公正な取引をおこないましょう。
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